今回は、新型コロナウイルスワクチンが、実際にどの程度効果があるのか?や、変異株に対して効くのかどうか?みたいな点を詳しくお話していきたいと思います。
※現在日本ではファイザー製とモデルナ製の2種類のワクチンが使用されています。
アストラゼネカ製に関しては認可されているものの、実際には日本国内で使われていないので、今回の解説ではアストラゼネカ製に関しては割愛します。
感染予防効果と感染「症」予防効果という2つのワードが実は違うものを指している、とかも含めて、よくわからない・小難しいと感じるのは多いですよね。
そこも細かくかみ砕いてご説明していきますね。
感染と感染症は違う
実はこの2つの言葉、同じことを指すように思えるかもしれませんが、違います。
感染=感染症ではありません。
つまり、「感染したからといって、感染症を発症するとは限らない」ということです。
感染 | 病原体が身体に侵入してくること |
---|---|
感染症 | 病原体が身体に侵入し何らかの症状が出る病気 |
「無症候性感染」の言葉は聞いたことがあると思いますが、それが、「感染しているけど、感染症を発症していない」という状態です。
当たり前?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、非常に大事なことなのであえてお話ししました。
ワクチンの効果を正確に理解する上で非常に重要な考え方になります。
ワクチンの効果の指標と実際の効果
ワクチンの効果(目的)とは、感染「症」の予防です。
これはつまり、「感染しなくなること」を一番に目的にしていないという意味です。
もちろん、感染そのものの確率も間違いなく下げます。
しかし、感染そのものが成立しても、症状の発症を予防したり、重症化を予防したり、死亡率を減少させたりなどが一番に目的としているものです。
そこを踏まえてワクチンの効果の指標を以下に列挙します。
ワクチンの効果の指標
① 感染の可能性(感染率)の低下 | 70~90%程度減少させる |
---|---|
② 感染症の発症予防率 | 95%以上減少させる |
③ 重症化予防率 (④ 死亡率の低下率) |
ほぼ100%減少させる |
基本はこの4つなります。④は③に含まれるので、④の数字は割愛します。
それぞれに関しては、ファイザー社製・モデルナ社製と若干の違いがあるものの、大体は上記のような数字になります。
発症の予防率と重症化予防率
②と③からお話ししていきます。
ワクチンを接種した人と偽薬を接種した人を観察していった研究(ファイザー社の第2/3相試験、モデルナ社の第3相試験)において、ワクチンを接種した人21,720人の中で、発症した人は8人だったのに対して、偽薬を接種した人21,728人の中で発症した人は162人でした。
つまり、162人中、154人の発症を予防できた=95%以上の予防効果があった。と言えます。
また、そのうち、重症化した人は10人いましたが、そのうち9人は偽薬を接種した人たちで、ワクチンを打ったにも関わらず重症化した(残念な)人は1人でした。
つまり、この研究からは母数が少ないので大雑把に90%~100%の間の重症化予防効果があると言えます。
これはファイザー社製のワクチンを用いた研究結果ですが、モデルナ社製のワクチンでも同様の研究がなされており、そこでは重症化予防効果は100%であった報告がされています。
もっとも、このファイザーの研究結果における重症化の定義も、「酸素飽和度93%以下」が含まれていて、それだけ該当していたので、実際には入院加療が必要なレベルには至っておらず、真の意味ではほぼ完全に重症化を予防できたとも言えます。
つまり、発症予防効果は95%以上、重症化率の低減確率に関してはほぼ100%と言えるのがわかるかと思います。
感染予防効果
次に①の感染自体の予防効果です。
感染症や重症化は予防できても、他に移す可能性が高いままだと、日常生活が送りにくいですよね。
こちらに関してはデータにより様々ですが、流石にほぼ完全に予防できるとは言えないのが残念なところです。
ですが、データにより7割から最大90%は予防できるというデータがあります。
一つはモデルナ社ワクチンの第3相試験の結果から、2回目の接種時に行ったPCR検査にて、無症状にも関わらず陽性になった人はワクチン群で14人(0.1%)、プラセボ群で38人(0.3%)でした。
また、ファイザー社のワクチンを世界に足がけて国民のほとんどに接種し終わったイスラエルのリアルデータからは、60万人のワクチン接種者の中で、2回目の接種から7日間たった人で感染予防効果は92%、無症候性に限って言えば90%の予防効果がありました。
一番新しいのは米国CDCの研究結果で、2回目の接種から14日以降では無症候性感染を含む90%の感染を防ぐ効果があると証明されています。
以上のように、一番重要な感染「症」の予防効果は100%近い効果があり、感染自体も70~90%は予防できるという結果になります。
実際に日本でも、高齢者への接種が概ね済んでいるものの、それ以外の年代では不十分な状況下である、2021年8月現在において、第5波が猛威を奮っています。
しかし、高齢者への感染は若年者~中年者と比較するとかなり少ないです(下図参照)。
このようにワクチンによって感染もかなり抑制されることが、実際の感染者数のデータから見ても分かりますね。
図:新規感染者数の推移(8/4ADB資料より)
変異株に対しての効果
実際には「しっかりと効果はあります」。
もちろん免疫回避を行うウイルス変異のため、効果が弱まることは否めません。
ファイザー製のワクチンは9割近い感染予防効果が67%まで低下したと、イスラエル政府発行のプレスリリースに記載されています。
メイヨークリニックの報告では、従来株に対しては76%の感染予防効果があったのと比較して、デルタ株に対しては42%の感染予防効果しかなかったと報告がありました。
一方で、モデルナ製のワクチンに関しては、75%程度の感染予防効果があったとのメイヨークリニックの同じ研究で報告があり、効果としてはモデルナ製の方が良さそうなものの、どちらも感染予防効果としては減弱しています。
しかし、ワクチン効果で一番重要な重症化予防・死亡率低下の効果に関しては、従来株とほぼ変わらないというデータが出ています。
これらはWHOが発表しているin vitro(試験管内での研究)のデータと比較しても一致しており、恐らく現実をしっかりと反映していると考えて良いと思います。
つまり、変異株(デルタ株)が主だからワクチンが意味ない、ではなく、『デルタ株であってもワクチンの効果はしっかりとある』。
しかし感染予防効果は弱まるので、『ワクチンはちゃんと打とう。でも打ってから油断するのではなく、打ってもしっかりと今までの感染予防対策も実施していこう』というのが正しい解釈と言えると思います。
打てる年代の方がうつさない・広げないの意識を持ちましょう
12歳未満の子どもなど、まだワクチンを打つことができない方もいる以上、打てる年代の方がきちんと打ち、なるべくうつさない・広げないことを意識することも重要なことだと思います。
まとめ
まとめです。
- ワクチンの効果の指標=目的は、感染予防効果以上に、重症化予防や死亡率低減です。
- 現在日本で用いられている2種類のワクチン(ファイザー製とモデルナ製)に関しては、従来株に対して重症化予防を防ぐ確率はほぼ100%近い。一方感染予防効果もおおよそ90%程度とかなり高い。
- 現在(令和3年8月)流行中のデルタ株に対しては、感染予防効果自体は50%~80%と低下するものの、重症化予防効果や死亡率低減効果に関しては、従来株に対してとほぼ同程度保たれています。
- デルタ株だと感染予防効果が下がるもののそれなりに保たれている上、重症化予防効果はしっかりとあるため、ワクチンを打つことには十分意味があります。
- ワクチンを打ちつつ、引き続き感染予防を行うことが、自分たちの命だけでなく、大切な子ども達の命を守ることにも繋がります。
以上です。
つくば市の内科 B-Leafメディカル内科・リハビリテーションクリニックでは、医師をはじめスタッフ全員のチームプレーで、みなさまの健康をお守りいたします。
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